食事が十分に摂れない女児|産婦人科コラム

食事が十分に摂れない女児

2011年05月02日
 

『10歳Sちゃん。数ヶ月前から食事がのどにつかえ、飲み込みにくいという症状が出現。そのため、食事量が減り体重も減少し、小児科、耳鼻科などを受診しましたが、明らかな異常は認めないということで、当院にお母さんと一緒に来院。』

Sちゃんの顔色はやや不良で行儀は良いのですが、少し神経質な印象でした。平日はきちんと登校できているのですが、週末になるとくたびれて家で休むことが続いているそうです。

いわゆる虚弱な体質の小児には『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』がよく使われることは以前にもお話しました。Sちゃんにもこちらを飲んでもらいましたが、少しは良いようなのですが、今一歩という手ごたえでした。

さらに『香蘇散(コウシサン)』を加えて、「気」をはらして元気になってもらおうとしました。こちらの反応も悪くはないようですが、劇的な効果という程ではありません。

とりあえず、数ヶ月飲んでもらいましたが、腹痛とともに飲み込みにくさが再び出現したところで、神経質な点に注目して『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』に変更したところ、飲み込みにくさは改善し、体重も増加するようになりました。

『抑肝散(ヨクカンサン)』は、神経症・不眠症・夜泣きなどの小児に用いられることが多いのですが、最近では高齢者の不穏・興奮などにも効果があることが実証されています。

Sちゃんの場合は、神経質な面の他に、消化機能の衰えも考慮して、「陳皮」「半夏」を加えた『抑肝散加陳皮半夏』を処方してみました。また、『香蘇散』も紫蘇の香りがして気分が良くなるようで、本人も自ら好んで飲みたいとお母さんがおっしゃっていましたので、継続して飲んでもらうことにしました。

お母さんが話した「ここ最近は、少し食べただけでお腹が張って食べれないことがないんですよ。」という一言の中に今回漢方薬が効いた重要なポイントが隠されていました。

「気」の異常が起こるとお腹が張ったり、ガスが溜まった感じがしたりすることが多いのです。たまにお子さんのお腹を優しく触ってあげて日頃のお腹の状態を把握することはさりげないことですが、実は東洋医学的な診察にもなっているのです。

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医療法人社団 公和会 中村記念愛成病院
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