不安と心配のなかで|産婦人科コラム

不安と心配のなかで

2011年03月03日
 

世の中には「心配性」といわれる人がいます。
その反応が過剰だったり、ピントがずれていたりするのですが、当人は真面目に悩んでいます。

現代は情報過多で、過剰な情報の中から適切なものを取り出すのは難しいのですが、心配性の人は、適切なものを取り出さずに、不適切な情報をとんでもないところから取り出して不適切な方向で悩むようです。

一方、医師に対する患者の要望は「よく説明してほしい」に尽きるようです。「よく説明する」とは「患者が持っている疑問に対して、患者が理解できるまで説明する」ことなのです。

確かにこれができてこそプロなのでしょうが、恥ずかしながら私はこの域には達しておりません。手を変え、品を変え、どうしたら理解してもらえるか日常診療で模索している中、「はじめて自分の病気がわかりました」なんてうれしい事を言ってくれる人もいらっしゃって、報われた思いがすることもあります。

ところが、しばらくするとまた同じ説明が必要になる人が少なからずいることに最近気がつきました。必ず振り出しにもどるのです。「それはわかりました。でも大丈夫なんでしょうか。万一のことを考えると心配でどうしようもありません」この論理を突破するのは難しいです。未熟な私は以前そういう人に会うとがっくりし、イライラしたものでした。

妙に心配と悩みばかり繰り返す患者に、『加味帰脾湯(カミキヒトウ)』を使うようになってある程度悩みは解消しました。この薬の効き方は、論理は変わらないのですが、悩む量が減ってくるようです。

こうなってくれると、医師も患者もお互いに楽な付き合い方に変わります。「こうだから、こうなる。だから大丈夫。」なんて通用しません。不安だから不安なのです。独特の不安感で、勝手といえば勝手なのですが、刺激を与えると不安はどんどん膨らみます。自分の意思では小さくならないし、精神安定剤も効かないこともあります。

「患者と医者の間柄にも相性がある」といわれますが、『加味帰脾湯』の効く人たちをみていると、現代の日本で、弱いものいじめを真面目にとりあわないから、結果としていじめてしまっている風潮と、何か重なっている感じがします。

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