ひどい生理痛(その2)|産婦人科コラム

ひどい生理痛(その2)

2007年02月20日
 

『32歳Mさん。不妊を主訴に来院。もともと冷え症もあり、生理のとき量が多く、痛みもつらいとの事。』

この方の外来に来られたときの第一印象は、妙に唇がカサカサしていた点でした。このように「肌や唇にツヤがなくてガサガサしている状態」は東洋医学的には、「血虚(ケッキョ)」と云いましたね。

以前お話したように、「血虚」は「貧血」とは異なります。血液の栄養が末端まで行渡らない状態ですから、当然ながら「眼精疲労」「脱毛」「集中力低下」などの症状も起こり得ます。

「血虚」を治す4つの生薬の代表選手そのもので構成された漢方薬に『四物湯(シモツトウ)』があります。この薬を基本骨格にして様々な症状に対応できるように生薬を追加したことで「血虚」対策の漢方薬はいろいろあります。前回登場した『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』もこの『四物湯』がベースになっています。

Mさんには『温経湯(ウンケイトウ)』を処方しました。この薬は『四物湯』に止血作用(月経過多)・気を巡らせる作用・体を温める作用・下腹部の痛みを取る作用をもつ生薬が追加されています。

また、西洋医学的には排卵に関わるホルモンの分泌を正常化する作用も動物実験で証明されているようです。つまり「冷えていて子供が出来にくく、月経過多に伴う下腹部痛に悩まされる」という方にはまさしくうってつけの薬でしょう。

処方後、一ヶ月してMさんは「体が最近暖かく、体調がいい」と云って来院されました。実は「体調がいい」というこの一言が大事なのですね。漢方薬は身体の本来の状態に戻そうという作用が働きますから、治したい症状以外にも様々な効用が現れてきます。二ヶ月経って、排卵もしっかり起こるようになり、生理痛も軽くなったとの事でした。現在妊娠に向けて頑張っています。

この方は不妊を主訴に来院されましたが、不妊に『温経湯』が有効というわけではありません。身体の状態が『温経湯』にあうものであったに過ぎません。ですから、同じ薬をほしいという方がよくいらっしゃいますが、この点をよく理解していただきたいと思います。さもなければ、漢方薬本来の効果は得られませんから…。

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