頭痛と漢方薬①|産婦人科コラム

頭痛と漢方薬①

2013年04月15日
 

『75歳Mさん。60歳頃よりときどき頭重感があり、数ヶ月前から朝目覚めた時の頭痛が始まった。最近は常時頭重を感じる。肩こり、手足のしびれ感もあり、熟睡ができず、朝早くから目が覚める。夜間2時間ごとに排尿し、便秘がちでもある。他院にて『八味地黄丸(ハチミジオウガン)』を処方されて飲んでいるが、最近胃が不調との事。漢方薬の相談にて来院。』

Mさんは、48歳で脳血管障害を指摘されたことがあり、いつの頃からか軽症高血圧といわれるも降圧剤は飲んでいないとの事でした。生命の危険がある頭痛では、西洋医学的治療を優先することは当然ですが、Mさんのように高齢者の頭痛、更年期障害に伴う頭痛、月経時に悪化する頭痛、鎮痛剤で胃腸障害をきたす虚弱者や三叉神経痛などには漢方治療を試みる価値はあるかと思われます。

Mさんには、『釣藤散(チュウトウサン)』を飲んでもらい、『八味地黄丸』に含まれている「地黄(ジオウ)」が胃を荒らしている可能性があるため、一時休薬してもらうことにしました。投与後、5日で頭痛が軽くなったようで、2週間後の来院時は「目もスッキリしてきた」との事。2ヶ月間飲んでもらい、「頭痛・頭重感ともになくなって快調です」とおっしゃるので継続してもらいました。

最近薬を取りに来ないと思いきや、別の件で来院された時、「あれ以来、軽い頭重を感じることはあるが痛むことはありません」とおっしゃっていました。

『釣藤散』には、主薬に脳血管を広げて脳循環を良くする「釣藤鈎(チュウトウコウ)」が含まれています。また、Mさんが同時に「ほてりが良くなった」と云われたのは、『釣藤散』に含まれている「石膏(セッコウ)」(冷やす作用をもつ)が効いたと思われます。ですから、「冷え症」の方にはむしろ『釣藤散』は適応にはなりません。

中高年になり、高血圧などの生活習慣病の傾向が出てくるとともに、慢性的な頭痛がするといったことがある場合、特に起床時あるいは午前中に調子が悪い方に有効なのが『釣藤散』です。最近では、頭部の動脈硬化を改善したり、認知症の予防にも有効な点が報告されています。

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医療法人社団 公和会 中村記念愛成病院
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