グループをなす漢方薬① (建中湯類)|産婦人科コラム

グループをなす漢方薬① (建中湯類)

2017年08月10日
 

漢方薬は基本骨格となる生薬の組み合わせにさらにいくつかの生薬を重ねることでバリエーションを増やしていきます。これらはグループをなす処方群として認識することができます。今回は『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』という腹痛・しぶり腹に適応をもつ漢方薬でそこに様々な生薬を加えることでできるグループ(建中湯類…「中」はお腹、「建」は建て直すという意味)についてお話します。

『桂枝加芍薬湯』は『桂枝湯』と同じ生薬構成ですが、「芍薬」の量を1.5倍にしたもの(つまり桂枝加芍薬湯=桂枝湯加芍薬)です。『桂枝湯』は風邪の初期などを含めて様々な目的で使用される基本的な漢方薬ですが、腹痛を去る「芍薬」を増量したことで、腹部症状に対応する漢方薬に仕上げられています。この腹部症状とは疼痛・下痢・便秘のいずれをも含みます。「お腹の動きを調節し、疼痛を取り去る処方」とご理解下さい。

『桂枝加芍薬湯』に「膠飴(コウイ)」というお米でできた飴(アメ)を加えた処方が『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』です。「膠飴」には、精神を落ち着かせ不安を減じる作用をもちます。「過敏性腸症候群」という器質的な異常を認めず、下痢や便秘が交代で出現したり、腹痛、腹部膨満感が現れたりする疾患では、『桂枝加芍薬湯』が漢方薬では第一選択薬になりますが、その背景に精神的要因が関与している場合は多く、むしろ「膠飴」を配した『小建中湯』が有効なことは知られています。腹痛を理由に登校拒否する児童などにもよい適応です。

『小建中湯』にさらに「当帰(トウキ)」を加えた処方が『当帰建中湯(トウキケンチュウトウ)』です。「当帰」は「下腹部痛」を主に治す生薬なので、建中湯類のいずれかを用いようとした場合に「下腹部の痛みが目立つ」ことが使用目標になるわけです。

また『小建中湯』に「黄耆(オウギ)」を加えた処方は『黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)』です。「黄耆」はいわゆる「寝汗」を主に治す生薬ですから、「寝汗をかきやすい」かどうかがキーワードになります。

『桂枝加芍薬湯』に「大黄(ダイオウ)」を加えた処方が『桂枝加芍薬大黄湯』です。古来は食中毒などを原因として腹痛が発生した場合に用いられた漢方薬ですが、現在では「下剤を使うと腹痛がおこる。しかし、便秘がある」場合や『桂枝加芍薬湯』では改善しない便秘という場合によい適応でしょう。

このように加えられる生薬が何を目的としているかを理解すれば、複数の漢方薬の共通点や違いが分かりやすくなるとともに、自分に合っている漢方薬かどうかの判断の手助けにもなります。

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