カゼと漢方薬(その2)|産婦人科コラム

カゼと漢方薬(その2)

2005年04月16日
 

前回に続き、カゼのお話をします。

葛根湯[カッコントウ]はドラッグストアでも見かける位に有名な漢方薬ですし、病院でもよく処方されますね。では、なぜそんなによく使われるのでしょうか?

葛根湯に含まれる生薬のベースは、前回お話した桂枝湯[ケイシトウ]ですが、桂枝のみでは発汗作用が弱いので、麻黄も加えています。さらに胃を保護する生薬まで入っています。ですから、麻黄湯[マオウトウ](前号参照)と桂枝湯の中間みたいな薬なのです。

でも、葛根湯には処方名が示す通り、葛根が含まれていますね。葛根は単独で「首筋の凝りを取る」作用を有します(「女性と漢方・~肩こり~」を参照)。

となると、カゼの患者さんで「表寒」(悪寒、関節痛など。詳細は前号参照)を診たら、「肩がこりますか?」と一言質問すればいいんですよ。イエスなら葛根湯、ノーなら桂枝湯か麻黄湯を使うことになるわけです。

つまり、漢方薬を選ぶために「肩こり」の有無を聞くわけですね。では、桂枝湯か麻黄湯が無いときに葛根湯でもいいのか?答えはOKです。

葛根湯には桂枝と麻黄の組み合わせ(発汗作用が強力)が入っているのですから。葛根がそれに加わっても効き目に悪さはしません。だから、「肩こり」のないカゼの人に葛根湯を処方しても問題ないのです。でも、たいていはカゼのとき肩や首筋が凝る場合が多いですね。その点からも葛根湯の処方頻度が多く、かつ使いやすい薬なのです。

次に小青竜湯[ショウセイリュウトウ]についてお話します。この薬はアレルギー性鼻炎で有名ですが、基本は桂枝と麻黄の組み合わせなので、要は「表寒」のカゼの薬です。

ただし、小青竜湯には「収斂(しゅうれん)作用」(ひきしめる)を持つ生薬も含まれているので、特に鼻粘膜に作用すれば、鼻水が止まるようになるのです。よく『アレルギー性鼻炎だから小青竜湯』と短絡的に処方すると、必ず効かない人が出てきます。本来は「表寒」の薬なので、「表熱」の人には合いません。暑がりの人に「発汗作用」のある薬を飲ませたら、どうなるかお分かりでしょう。

インフルエンザに漢方薬は効くのか?という質問に対して答えはイエスです。

以前、家族がインフルエンザで大変な目にあった方で、ご自分だけ免れた方がいましたが、体がゾクゾクしたときにすぐ麻黄湯を飲んでいたようです。抗インフルエンザウイルス薬も48時間以内に内服しないと有効でないですから、かかり始めが肝心ということですね。

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