PMS(月経前症候群)と漢方薬
『32歳Mさん。24歳ごろから、月経前のイライラがあった。2年前に出産して月経が再来して以来、月経3~4日前から怒りっぽくなり、過食による体重増加、眠気と倦怠感などの症状が強くなった。最近は料理を作るのが苦痛でたまらない。PMS(月経前症候群)ということを知人から聞いて、当院に来院。』
PMSの本質は、東洋医学的には「気滞(キタイ)」(気がスムーズに流れない状態)がベースにあることが多く、当然「イライラ感・怒りっぽい」といった精神症状が出るのですが、「気滞」により「水・血」のバランスの乱れも引き起こします。それにより、「頭痛・めまい・頭重感」や「むくみ・体重増加・尿量減少」などの症状が出現します。
Mさんは、下半身の冷えが強く、秋口からカイロを使うそうです。また、PMSによくみられる偏頭痛もあり、軟便傾向でむくみやすいとの事でした。PMSの第一選択薬ともいえる『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』を飲んでもらいましたが、一ヶ月でイライラは消失しました。三ヶ月経過してむくみが出てきたというので、『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を併せて飲んでいただきました。その後、月経周期も安定し、調子は良いようです。
「気滞」になると「うつ状態」もよく現れますが、Mさんの場合のキーワードは「料理を作る気がしない」でした。実は「うつ状態」を見極めるポイントで「日頃できていたことができなくなる」という点は大変重要で、Mさんの『家事ができなくなる』は見逃してはなりません。
PMSとは、月経の2週間ないし1週間位前からおこり、月経開始とともに消失する、周期性のある一連の身体的、および精神的症状を示す症候群(いろいろな症状の集まり)です。PMSの多彩な不定愁訴は①抑うつ気分、イライラ、怒り易い、ののしり ②頭痛、めまい、ふらつき、転倒 ③浮腫(むくみ)、体重増加、尿量減少 ④過食、眠気、倦怠感などがあります。周囲の方は、女性にはPMSという病気があるということをふまえて接してあげる気持ちも大切です。女性には男性にはない特有の病気があることを理解してあげましょう。
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