過敏性腸症候群と漢方薬|産婦人科コラム

過敏性腸症候群と漢方薬

2020年03月02日
 

『17歳女子Sさん。高校入学して列車通学をするようになってから、下痢とガスでお腹が張ることが激しくなり、授業中も下痢やガスで我慢できず、授業を休むこともしばしばあった。いろいろな病院で治療はしたが、漢方薬を試したいとの事で来院。』

Sさんは、他院にてすでに漢方処方を受けており、少しは良い程度であった様子でしたので、足やお腹の冷えが強い点に注目し、『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』と『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』を併せて処方しました。一か月飲んで効果を実感されて、「お腹が温かくて気持ちいい」との事で、三か月続けて飲んでもらうことにしました。

飛び散るような、ヒリつくような炎症性下痢やヒステリー型には『半夏瀉心湯」(ハンゲシャシントウ)』に『甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)』を併せたもの(『甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)』という漢方薬になります)などを使いますが、他院で『半夏瀉心湯』が既に処方済みでしたので、先ほどの内容にしてみました。

過敏性腸症候群には主に腸の異常運動であり、「気滞(キタイ)」(「気」の巡りが滞っている状態)であることが多いため、多くは『桂枝加芍薬湯』をベースにして他剤を加えることをします。ストレスやイライラなどがあると『四逆散(シギャクサン)』、冷えが強いと『人参湯(ニンジントウ)』や『大建中湯』を、ガスが多いと『大建中湯』を加えたりします。

『桂枝加芍薬湯』が有効な人は消化管が過敏で、痙攣様運動を起こしやすいタイプで、胃の緊張も強いために逆に胃壁は伸展しにくく、食べるとすぐに膨満感がおきて一度に多量に食べられない、そして腸の蠕動運動は亢進するため、すぐに空腹感を覚え、少しずつ頻回に食べる傾向が多いようです。

過敏性腸症候群には、便秘型・下痢型・下痢便秘交代型・ガス型があり、腹痛を伴うことが多く、特に下痢型・ガス型で症状がひどいとSさんのように日常生活に支障をきたします。通学だけではなく、受験や就職を断念したりするなどの深刻な状況がしばしば見受けられます。

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