水毒に対する漢方薬(熱中症)②
今回は前回に引き続き「水毒」の症状の一つとして東洋医学ではとらえられる「熱中症」の漢方薬についてまとめてみます。「水毒」とは西洋医学の「水中毒」とは別の概念で「体内の水分のアンバランス(過不足)」であることは前回述べましたが、「水分の過剰」だけではなく、熱中症・激しい下痢・乾燥気候による水分の喪失は「水分の不足」として「水毒」の範疇としてとらえます。
熱中症でよく使われる漢方薬は『清暑益気湯(セイショエッキトウ)』『五苓散(ゴレイサン』『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』があります。基本的には発汗・熱感・口渇・悪心・嘔吐・尿量減少・下痢のうちいくつか該当するものがあれば『五苓散』が有効です。甚だしい発汗があり、今まさに発熱・口渇の症状があれば『白虎加人参湯』、わずかな発汗・食欲不振・倦怠感があれば『清暑益気湯』となります。また、『五苓散』を使用するようなケースでも、その後の症状が穏やかで軽い食欲不振、下痢があれば『胃苓湯(イレイトウ)』、軟便~下痢が持続している場合は『六君子湯(リックンシトウ)』『人参湯(ニンジントウ)』『真武湯(シンブトウ)』などにします。熱中症の後で気力がなくなれば『補中益気湯(ホチュウキトウ)』、同時にめまいなどを感じれば『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』を選択します。
数年前ですが、知り合いの中学生のお子さんが合宿で熱中症に罹ってしまい、救急外来でビタミン剤を入れた電解質輸液をして帰宅したが、水分を飲むと吐いてしまうというので『五苓散』を溶かして少しずつ口に含んでもらいました。翌日は平熱で悪心・嘔吐もなく病院にも行かなかったようです。この症例では若さと体力に負うところが大きかったと思われますが、漢方薬にはいつもお話しするように即効性が期待できます。
熱中症に対する西洋医学的対応は予防と脱水に対する補液で当然ながら重要な対応になりますが、漢方治療を介入させることで個々に合わせた幅広い対応が可能になり、漢方薬の存在意義を感じます。私自身も夏場の暑いところに長時間居ることが予想される場合には、ペットボトルに『五苓散』『白虎加人参湯』を携帯するようにしています。
同じような不安を抱えている方が
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