終末医療と漢方薬
『87歳Nさん。高齢で寝たきりに近い状況で、風邪をひいて治りが悪いため、往診で点滴を受けているが、日に日に体力が落ちてきて食事も喉を通らなくなった。漢方薬も工夫して投与してもらっているが、はかばかしくない様子。本人は言葉を発するのも大儀なのか、ただただボーッとしている。もうダメかと思うけれど何か手だてはないものかと相談されました。』
知り合いの娘さんからのお電話による相談でしたが、漢方医学の立場では、「裏寒(リカン)」(身体の内部が冷えている)という状態に陥ったために風邪の治りが悪いばかりか生命力が衰えているために認知症のような状況になっているのではないかと想像されました。
既に投与されている漢方薬には「裏」を温める生薬は含まれていないようでしたので、以前娘さんが当院に受診していた頃に処方した『人参湯(ニンジントウ)』と『附子末(ブシマツ)』を合わせて飲んでもらい、身体を温めるようにお話しました。
後日、喜びの連絡がありました。『人参湯』と『附子末』を飲んでからは、元気を取り戻したとの事でした。
『人参湯』は消化器だけでなく心肺も全身も同時に温め、生命力を高め、冷えに起因する鼻水・咳・喘息にも効果のある漢方薬です。他の部位と比較して胸を触ると冷たいときは特に有効です。
最近の乳幼児はよく診ると隠れた「裏寒」に陥っていることが意外に多く、乳幼児の諸疾患にも用いる医師もいます。
Nさんの症例のような著しい体調不良に対して現代医学の立場では経過観察しか手がないときでも、漢方薬に温裏薬(内部を温める薬)があることを知っていれば、患者さんのお役に立つことがあります。漢方薬を扱っている者にとっては何とも嬉しい限りですね。
同じような不安を抱えている方が
いっらっしゃいましたら、
お一人で悩まず、ぜひご相談ください。