やさしい漢方コラム|北見産婦人科|中村記念愛成病院

やさしい漢方コラム

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冷え性と漢方薬②


『23歳Mさん。子供の頃から寒がりで、特に手足が冷たく、腰回りの冷えも自覚する。熱い風呂を好むが長湯するとのぼせやすい。冷たいものをよく摂る。最近はめまいや立ちくらみもよく起こるようになったため、漢方薬による体質改善?を希望して当院に来院。』

Mさんの冷えは手足や腰周りなどの局所が中心であること、冷たいものをよく摂取していること、便秘や肌荒れと比較的強い月経痛を認めることに加えて、舌が暗赤色で下腹部に圧痛を認めることなどから、「お血(オケツ…詳細は以前の号参照)」による冷えと捉えて、『桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)』を処方しました。

1週間後、「手足はあまり冷えなくなった。立ちくらみは変わらない。」3週間後も「めまい、便秘、月経痛はまだ変わらない。」という時点で、めまい・立ちくらみを目標にして、『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を併用してみました。

1ヶ月たって、「めまいも少なく、便通も良い。今回はいつもよりも月経痛が軽かった気がする。」との事。 

さらに2ヶ月飲んでもらい、暖かくなった季節の影響もあるのでしょうが、手足の冷えは消失しました。めまいも一月に数回あったものが、1回あるかないか程度にまで改善していました。その後3ヶ月分追加処方しましたが、その後は受診しておりません。

冷えの改善を目的に漢方薬を希望される方は多く来院されますが、大部分は温める生薬が含まれた薬を用いることが多いです。

しかし、Mさんのように冷えの原因が末梢の血流障害、いわゆる「お血」の場合にはそれを改善する『桂枝茯苓丸』などが適応になるわけです。

実際の臨床では、なかなか判別が困難な症例もありますが、問診で「長湯するとのぼせる」「冷え性なのに冷たいものを採る」という些細な矛盾点に注意したり、実際にどれくらい冷えているのか手で触って確認することも大切です。

意外と冷えを訴えている割には、手足はさほど冷たくない方もいらっしゃいます。このような方に温める漢方薬を処方すると逆効果になってしまうことがあり、私自身も幾度か苦い経験をしております。

 
漢方薬の素材

同じような不安を抱えている方が
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お一人で悩まず、ぜひご相談ください。