生薬解説シリーズ半夏(ハンゲ)|産婦人科コラム

生薬解説シリーズ半夏(ハンゲ)

2019年10月07日
 

今回は漢方薬を構成している生薬のうち、「半夏(ハンゲ)」についてお話いたします。「半夏」は嘔気や嘔吐によく使われる生薬ですが、「生姜(ショウキョウ)」(いわゆるショウガです)と組み合わせるとその作用は強力に発揮されます。ですから、嘔気や嘔吐を治す漢方薬には、この二つの生薬が含まれていることが多いのです。

例えば、「つわり」でよく用いられる『小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)』は「半夏」「生姜」「茯苓」の3つの生薬で構成されています。「茯苓」はめまいや動悸を主治する生薬です。つまり、「つわり」でも嘔気や嘔吐の他にめまいや動悸があれば、より有効ということになります。耳鼻科疾患でこのような症状がある方には使えます。

『小半夏加茯苓湯』にさらに「紫蘇葉(シソヨウ)」「厚朴(コウボク)」といった「気うつ」を晴らす生薬を組み合わせたものが『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』になります。つまり、「めまいを伴う嘔気や嘔吐」に「うつうつとした気分」が加わった症状に有効なわけです。「食道神経症」といわれる喉に何かひっかかっているような違和感を訴えるような症状にも使えます。精神的な問題(気うつ)が引き起こす症状を「紫蘇葉」「厚朴」で軽減しようとするわけです。

『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』は「半夏」「生姜」の他に「黄連(オウレン)」「黄芩(オウゴン)」といった身体の胸部から腹部に存在する熱(「裏熱」といいます)を取るための生薬が組まれています。「裏熱」によっておこる症状は下痢、気うつ(気うつになると鬱屈している場所に熱はこもる場合があります)など多彩ですが、さらにみぞおちあたりの不快なつかえ感を取る「人参」も組まれています。ですから、「感染性胃腸炎」にはよい適応になることはご理解いただけると思いますが、ストレスの結果陥った消化器症状(つまり「気うつ」が原因)にも使うことができます。

このように「半夏」は嘔気や嘔吐を主体とした症状に有効なことはお分かりになったと思いますが、本来の薬能は「身体の中心部分(胸や腹)に余った水分を排除する」ことです。つまり「乾かす」生薬ですので、身体に乾燥がある場合には適応となりません。では、それを見抜くにはどうしたらいいのでしょうか?

それは「口渇」です。「口が乾く」「舌が乾燥している」ような場合には「半夏」を使うとより乾燥させてしまうので適応外となります。では、「口渇」が顕著な場合はどうしたらいいのでしょうか?それは前回お話した「利水剤」(「利尿剤」ではありません!)が活躍します。その生薬が多く含まれた漢方薬の代表選手が『五苓散(ゴレイサン)』なのです。

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