生薬解説シリーズ 大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)
今回は漢方薬を構成している生薬のうち、「大黄」「芒硝」についてお話いたします。「大黄」は代表的な瀉下(シャゲ)剤(過剰なものを捨てる方剤)で、いわゆる下剤として多用されます。しかしながら、下剤としての作用だけでなく、気の鬱屈(いわゆる「気うつ」)や血の鬱滞(つまり「瘀血(オケツ)」)、熱のこもりなどを軽減する目的で使用されることもあり、むしろこちらの方が重要です。
また、「芒硝」にも「大黄」と同じ作用がありますが、両者には決定的な違いがあります。それは「大黄」は「乾かす」作用があるのに対して、「芒硝」は「潤す」作用があるということです。これは西洋薬で下剤として用いられるセンノシド(「大黄」に含まれている成分)と酸化マグネシウムの作用機序の違いからもイメージできます。センノシドは大腸を刺激して下剤の効果を発揮しますが、酸化マグネシウムは腸管内での水の再吸収を抑えることで便に水分を与え作用を発揮します。生薬でも同様に考えることができ、腸内の水分が不足している場合は「芒硝」を選択することになります。
漢方薬で便秘を改善する場合には、通常は「大黄」「芒硝」といった生薬が選択されるケースが多いのですが、「大黄」だけを用いるのか、あるいは「大黄」と「芒硝」を併用するのかは、「便に水を与える必要があるか否か」によって決まります。つまり、「便が硬くて出ない」場合には「芒硝」の併用を考えます。ただし、「大黄」と「芒硝」の組み合わせは最強のセットなので、あまり強力に瀉下(シャゲ)したくない場合には「芒硝」を「麻子仁(マシニン)」(やはり腸に水を与えます)などにしてマイルドな作用に変えることもできます。
「大黄」「芒硝」が配合されると、漢方薬に「○○承気湯(ジョウキトウ)」という名がつけられます。「承気」つまり「気を承る」という名が付けられているのは、この組み合わせが単なる下剤ではなく、「気うつ」を晴らす目的でも用いられるからです。また「気うつ」に対して用いられる生薬は、気は鬱屈している部位によって異なるのですが、「大黄」「芒硝」は腹部の「気うつ」に対して用いられます。ですから、便秘が主体で「うつうつとした気分」がすぐれない場合にはこれらの生薬が配合された漢方薬が選択されるケースが多くなるわけです。
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