自然妊娠の仕組みと不妊の原因について|北見産婦人科|中村記念愛成病院

不妊症外来

自然妊娠の仕組みと不妊の原因|北見産婦人科|中村記念愛成病院

自然妊娠の仕組みと不妊の原因

妊娠の仕組み

不妊症外来
  1. 卵巣の中にある複数の原子卵胞のうち、1ヶ月に1回1つだけ成長し、卵巣の外へと飛び出すことを排卵と呼びます。排卵が起こるためには、脳にある視床下部から出ているFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)というホルモンが必要であり、正常に分泌されることで卵胞を発育させ排卵を起こします。
  2. 排卵した卵子は、卵管采(ラッパ管)に取り込まれ、卵管のなかに入ります。
  3. 排卵近くになると、精子が子宮に入りやすくなるよう子宮頚管粘液が大量に分泌されます。
  4. 膣内に射精された精子がこの粘液を通り抜け、卵管にいる卵子と巡り合い受精します。
    精液検査における基準値
    精液量 1.5ml以上
    精子濃度 1,500万/ml 以上
    総精子数 3,900万以上
    運動率 40%以上
    正常形態率 4%以上(奇形率 96%未満)
    「WHO 精液検査ラボマニュアル第5版(2010)」より
  5. 受精した受精卵は、分割しながら子宮内膜までたどり着き、着床することで妊娠が成立します。
  6. 排卵が起きた後の卵巣(黄体)からは、妊娠を維持するように働く黄体ホルモンが分泌されます。

不妊症とは

「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交渉を継続的に行っているにも関わらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠の為に医学的介入が必要な場合は期間を問わない。」

日本産婦人科学会  「不妊症の定義」より

妊孕能(妊娠するちから)の正常なカップルでは、3ケ月で約50%、6ケ月で70~80%、1年で約90%が妊娠します。そのため、1年以上避妊せず性交渉を行っているにも関わらず、妊娠に至らない場合を不妊症といい、赤ちゃんを希望するカップルの10~15%に見られます。

不妊の原因

1.排卵障害

排卵は、卵巣から卵子が排出される現象であり、複雑なホルモンバランスによって行われています。排卵障害がある方は、このバランスが崩れて排卵が起こりにくくなっている状態です。

検査
  • 基礎体温:排卵の有無やホルモン状態を把握する。(基礎体温表をご持参ください)
  • ホルモン検査:LH、FSH、E2など(排卵に関するホルモン)
  • 卵胞径超音波検査:卵胞発育を確認。頚管粘液の性状とともに排卵を予測する。
治療
  • 健康管理:規則正しい食事や運動、標準体重など、まずはできる自己管理から始める。
  • 排卵誘発剤:rFSH、HMG、クロミフェンなどの注射や内服

2.卵管因子

卵管の先に「卵管采」と呼ばれ、排卵した卵子を取り込む場所があります。取り込まれた卵子は、卵管で精子と巡り合い受精します。胚(受精卵)は、分割しながら卵管~子宮へと進み着床しますが、クラミジア感染症や子宮内膜症などで卵管が癒着、狭窄、閉塞を起こしている方はこの過程が障害されています。

検査
  • 子宮卵管造影検査(ヒステロ):子宮内に造影剤を入れて子宮内腔、卵管の状態を調べる。
    ※詳しくは『不妊症検査について』をご覧ください。
治療
  • 子宮卵管造影の時、検査と同時に卵管の通りが良くなる場合があります。

3.頚管因子

頚管は、膣から子宮の内部へと通じており、排卵時期になると精子が動きやすくなるよう頚管粘液と呼ばれる分泌物が多くなります。この頚管粘液が十分に分泌されていない場合、精子が頚管を通り抜けられないため妊娠しづらくなる場合があります。

検査
  • 頚管粘液検査:排卵の時期に頚管粘液を採取し顕微鏡で検査します。排卵期には、量・透明度が増し、精子を受け入れやすい状態になります。
治療
  • 人工授精:細いカテーテルを使用し、直接子宮腔内に調整した精子を送り込みます。

4.子宮因子

① 子宮奇形

子宮は受精卵の着床場所として重要ですが、生まれつき子宮の形に問題があるため、それに伴う血流障害により、受精卵の着床や発育が妨げられることがあります。子宮の奇形は全女性の5%、不妊女性の2~3%に見られると報告があります。

子宮奇形 | 不妊症外来
② 子宮筋腫・子宮腺筋症

子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどがあると、せっかく受精していても、この病気が原因で妊娠しづらくなることもあります。

③ 子宮内膜症

子宮内膜症は子宮内膜だけの問題ではなく、卵巣にもその原因がある場合には排卵障害や卵子の質の低下にも結び付く場合もあります。

検査
  • 経腟超音波検査:子宮全体や内腔の形、ポリープや子宮筋腫などの有無が分かります。
  • 子宮卵管造影:子宮内に造影剤を入れて、子宮腔内や卵管の状態を調べます。
  • 血液検査:CA125など
治療
  • 子宮内膜症
    1. 特に治療はせず、タイミング療法など自然妊娠を試みる。
    2. 痛みに対する治療→鎮痛剤、漢方の処方。
    3. 女性ホルモンを抑制する薬を使用する

      ⇒中容量ピル、低容量ピル、プロゲスチン、タナゾール、GnRHアゴニストなど
      ※内膜の状態にもよりますが、痛みなど症状軽減のため4~6か月使用します。治療期間は排卵しない為、妊娠の可能性はありません。

  • 手術療法:
    1. 腹式子宮筋腫核出術:開腹手術で子宮筋腫を取り除きます。
    2. 子宮鏡検査(レゼクトスコープ):子宮腔内に細い器具を挿入し、その先端についているカメラで、ポリープなどをモニターで見ながら取り除く手術です。

5.黄体機能不全(内分泌因子)

排卵後、卵巣には黄体ができます。黄体は体温を上昇させたり、子宮内膜を厚くし着床に適した状態にするなど、妊娠初期の維持に欠かせないホルモンを分泌します。このホルモン分泌がうまくいかないと受精卵が着床しなかったり、着床しても流産してしまうことがあります。

検査
  • 基礎体温
  • 低温期、高温期、持続期間などから卵巣の働きを見ます。
  • 高温期中期のホルモン検査 E2(卵胞ホルモン)、P4(黄体ホルモン)、プロラクチン
  • 子宮内膜の厚さを超音波検査で見ます。
治療
  • 黄体ホルモンの補充、黄体刺激のためのHCG注射、排卵誘発など。

6.男性因子

男性側の要因としていくつか挙げられます。

① 造精機能の問題

射精精液中に精子がとても少ない、見つからない場合など精子をつくる機能に問題がある場合。

② 精路の問題

精巣でつくられた精子は、精巣上体、精管を通って射精されます。その通り道が狭い、もしくは閉塞されていることで射精される精液が少なくなったり、出ないケースは『閉塞性無精子症』と呼ばれています。

③ 精液・精子の問題

精嚢や前立腺に炎症を起こしたことが原因で精子の運動率が低下している場合、受精率に影響することがあります。また、射精精液中に死んでいる精子が多い場合や形に異常がある場合もあります。

④ 遺伝子の問題

精子に染色体異常があることで受精卵にも染色体異常が起こり、受精卵が育たず流産を繰り返す場合があります。

⑤ 射精機能の問題

射精時に閉じる括約筋が閉じていない場合、膀胱側に精液が逆流してしまい射精感はあるものの精液量が少ないことがあります。この症状は、原因不明のものや、前立腺や骨盤内の手術後に見られる場合があります。

⑥ 性機能の問題

性交時に勃起しない、または勃起が維持できない場合を『勃起不全』といいます。勃起不全は『心因性』や『器質性(神経、内分泌、血管などの問題)』に大きく分けられます。なかには2つ併せ持っていたり、糖尿病が基礎疾患にある場合があるため、内科治療と並行していくこともあります。

⑦ その他

男性の場合、疲労が精子をつくる能力にも影響し、精液検査などでも4倍近く差が出ることがあります。また、飲酒や喫煙も精子をつくる機能、精子の形、運動率に影響が出るとも言われています。

 不妊症検査について

7.原因不明

いろいろ検査して何も異常がないにも関わらず、どうしても妊娠しない場合をいいます。

治療
  • 人工授精:細いカテーテルを使用し、直接子宮腔内に調整した精子を送り込みます。
  • 体外受精:排卵期の卵巣から卵子を採取し、体外で受精させ、分割した胚(受精卵)を体内へ移植することをいい、媒精(Conventional)と顕微授精(ICSI)があります