ストレスと漢方薬|産婦人科コラム

ストレスと漢方薬

2019年04月10日
 

『39歳Sさん。数か月前から動悸が気になる。仕事中に話をしようとすると動悸のためにうまく話ができず、 手のひらにものすごい汗をかいてしまうことがあったとの事。漢方薬を試したいために来院。』

Sさんは西洋医学的にみれば、交感神経が興奮している状態です。こういう場合には『四逆散 (シギャクサン)』という「柴胡(サイコ)」「芍薬(シャクヤク)」「甘草(カンゾウ)」 「枳実(キジツ)」の4つの生薬で構成されている漢方薬をよく使います。「柴胡」+「芍薬」 の生薬ペアは抗ストレス、鎮静作用があり、「芍薬」+「甘草」には筋肉の痙攣(けいれん)を 抑える作用があります。一方「枳実」(みかんの皮を乾燥させたもの)という柑橘(かんきつ) 類には、ストレスによって動かなくなった胃腸を動かすという消化管の蠕動(ぜんどう)運動 を改善する作用があります。つまり『四逆散』は生薬の構造からみると、ストレスすなわち 交感神経の興奮を抑える作用がうまく含まれている漢方薬であることがわかります。

Sさんのように「緊張して手に汗をかいたり、ドキドキして人前に出ると顔が真っ赤になって しまう」ような交感神経が興奮する方に使うイメージです。『四逆散』は生薬数が少ないので 効果としての切れ味はよいのですが、『四逆散』単独で使うよりはそれに何か他のものを追加して 治療するということが多いです。

例えば、ストレスを感じて、抑うつ的な状態になっている場合には『半夏厚朴湯(ハンゲコウ ボクトウ)』、肩こりがひどければ『葛根湯(カッコントウ)』、神経性胃炎には『六君子湯 (リックンシトウ)』、より胃痛がひどければ『安中散(アンチュウサン)』、ストレスによる 過敏性腸症候群には『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』を組み合わせるといった 具合です。このように単独で使うというよりは、何かストレスで引き起こされた症状も伴わせて 治療するという使い方の方が、『四逆散』の持ち味が生かせると思います。しかしストレスに よる症状がなくても、『四逆散』を使うだけで精神的ストレスが緩和し、気持ちが楽になります。 ストレスに弱い方にはお勧めの漢方薬です。

先日私は胃カメラをしましたが、こういう検査前の緊張を取って鎮静するように使うといいかも しれないとふと検査後に思いました(苦笑)。でも検査前に薬を飲んではいけないんでしたね・・・。

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